実際の流れの具体例・・・
<左側の耳鳴り、難聴、めまい>
OS:左側の耳鳴り、難聴、及びめまいがある29歳、育児中の女性
説明モデル:はっきりとした原因はわからないが、子供の育児で疲れは溜まっていると思う。
受診動機:病院に1週間入院していたが、あまり回復しなかった。このままではまずいとホームページを見て鍼灸に効果があると知り来院。
現病歴
高校生の頃から、疲れが溜まったりすると軽い耳鳴り、短時間(20秒程)のめまい は頻繁にあった。放っておくとすぐに治まっていたので、これといって病院には行かず にいた。
今回、10日程前にスーパーで買い物中に突然、左の耳に「ドコドコ」「ゴー」といった
感じの耳鳴りがし始めた。あわてて自宅に戻り安静にしていたが今回はー向に耳鳴りが治まらず、そのうち左の耳が詰まった感じになり、聞こえが悪<なった感じがして、 同時に短時間ではあるが強いめまいがした。さすがに心配になり、電話で母親に来て
もらい、近くの病院に連れて行ってもらった。検査の結果「突発性難聴」と診断され、即入院となった。ちなみに難聴は今回が初めて。病院ではステロイドの点滴を1 週間程行ったが結局、耳鳴り、難聴は改善されず退院となった。尚、オージオグラム
は左耳の低音が100台を超えていた。
現在は、相変わらず耳鳴りは続いているが睡眠は問題ない。詰まり感もあり、聞こえが悪い。めまいは軽度のフワフワ感が常にある。増悪因子は疲れが溜まるとこれら
の症状が悪化する感じがあり、特に家でパソコンやスマホをしているとめまいがひどくなる。
緩解因子は入浴でのんびり浸かっているときは不思議と楽になる。随伴症状は暇性的な首肩のこり、緊張性頭持ちであり首肩が緊張すると頭痛が頻繁に起きる。
尚、本人はあまり切羽詰った感じは見受けられず、子育て、夫、夫の両親の不満を
延々と語っている。
一般健康状態
喫煙、飲酒歴なし、食欲正常、血圧(109/67)、服薬(病院にてメチコバール処方、
頭痛時に市販の頭痛薬)。
睡眠正常、体重の増減はなし。
既往歴
特になし 。
家族歴
母親が頭痛持ち、自律神経失調症。
身体診察
身長159cm、体重51 kg。左右の胸鎖乳突筋、斜角筋の緊張。左咬筋、側頭筋の緊
張。左顎関節の歪み。左右の後頚部~僧帽筋にかけての緊張。
尚、上記の筋肉群に対しての圧痛は無く、強く押すと気持ちがよいとのこと。
臨床診断 '
診断名:拍動性の耳鳴りを伴う頚性めまい。
根拠: ①耳鳴りの質が「ドコドコ」といった拍動性であること。
②ステロイドの点滴でほとんど効果がなかったこと。
③めまいの質が「フワフワ」としためまいであること。
④パソコン、スマホ等、首に負担がかかるとめまいが悪化すること。
⑤入浴で筋肉を温めると、耳鳴り、めまいが楽になること。
鑑別診断とその根拠
①突発性難聴:以前にも耳鳴り、めまいがあったこと。
②メニエール病:回転性のめまいがないこと。発作時のめまいの持続時間が短い
こと。
治療とその指標
まずは、首、背部の筋肉の緊張を取り、血行障害を改善して、耳鳴り、めまい、難
聴を改善することを指標とした。
時間が経つと改善が悪くなることを説明し、しばらくは毎日治療することを提案、納
得してもらい治療を開始した。
第1回(1日目)
伏臥位で完骨、天柱、天膠、肩中兪、風門に、39mm-0.18号(寸3、2番)で1.5Cm。
膏盲、隔兪、肝兪にlcm。 10 分程置鍼。次に左を上にした側臥位で天鵬、鸚風、聴宮、
及び首の付け根付近で緊張がある部分に2cm。 20分置鍼。最後に聴宮、ノ噛風に糸状
灸、各10壮ずつ行う。
第2回(2日目)
耳鳴り、詰まり感(聞こえ)は相変わらすだが、フワフワしためまい感はだいぶ取れたとのこと。治療は前回同様。
第3回(3日目)
フワフワしためまい感はない。耳鳴りは相変わらず、詰まり感(聞こえ)は少し良いと
のこと。治療は前回同様。
2回という短期間でフワフワ感が完治していることから、フワフワとした感覚がは
たしてめまいなのか疑問である。
第4回(4日目)
フワフワした「めまい感」はもうない。首肩のこりも楽になっている。耳嗚は相変は
らず、詰まり感(聞こえ)はだいぶ良いとのこと。治療は前回同様。
第5回(5日目)
昨日、鍼灸治療の後に病院で検査(オージオグラム)をしたところ、低音部が70台
に回復したとのこと。症状も耳鳴りが少し落ち着いているとのこと。治療は前回同様。
第6回(8日目)
耳鳴りはだいぶ落ち着いているとのこと。詰まり感(聞こえ)もあまり気にならない程
度。生活にあまり支障が無い程度まで回復したので、今回治療して少し様子をみます
ということになり、一旦終了となる。
症例のポイント
今回のようなケースは、疾患を特定するのが難しいが、突然の強度の耳鳴り、難聴、めまいがでた場合、突発性難聴を一番に疑ったほうがよいと思われる。
上記のように、会員が臨床での具体的なやり取りを、主訴、説明モデル、受診動機にまとめ、現病歴を説明して、実際の治療内容までレポートにまとめて発表いたします。
それについて、みんなでディスカッションしていくのが通常な流れになっていきます。
自分の考えていること、例えば自分はこの症例に関しては、このように思う、自分だったらこのような治療方法で治療する等・・・。
遠慮なく、発言していただければ幸いです。
興味がある方は、お気軽にメールください。
折り返し、ご連絡差し上げます。
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